『ハリー・ポッター』が売れた理由 [ブログ]
「だから、この作品を新人賞に応募しても、賞を取るのは難しいと俺が言うのは、そういうことなんだ」
「でも、もしかしたら、賞を取る可能性もゼロとは言えないですよね」
「たしかにゼロとは言えない。すごく評価されて受賞という可能性も、もちろんある」
雄太郎はその光景を想像した。『天才作家誕生』という見出しが華々しく新聞紙面を飾っているのを。『審査員満場一致で受賞、天才作家現る!』
「夢を売る男」 2 チャンスを掴む男 より (76~77ページ)
フリーターの温井雄太郎(25)は、丸栄社の編集者・牛河原勘治に原稿をべた褒めされて、出版することを決意する。提示された出版費用は3,650,000円。著者が負担するのはそのうちの1,470,000円。「出来る限り著者の負担を少なくするべきだと、俺もとことん販売部相手に頑張ったんだが―すまない。俺の力不足だ」と牛河原が釈明する。
牛河原の巧みな演技に雄太郎は見事に騙される。フリーターの雄太郎にとって1,470,000円は大金だ。しかし、「一世一代の大勝負に打って出るんだ!」と出版を決意。そして、その決意を友人に打ち明ける。友人の一人から「もしお前の作品が本当に素晴らしければ、新人賞に応募しても通るんじゃないの」と言われてその決意が揺らぐ。
そこで、雄太郎は、牛河原に新人賞への応募について打診する。しかし、編集者として修羅場をくぐり抜けてきた牛河原にその迷いは見事に吹き飛ばされる。
雄太郎 「牛河原さん。俺、丸栄社で出版します」
牛河原 「よく言ってくれた、温井君。一緒にいい本を作っていこうじゃないか」
(寸評) 売れない本とわかっていても、著者をその気にさせる牛河原の話術はさすがである。現実にこういう編集者、あるいは出版社は存在するはずだ。そういう編集者や出版社にとってこの本は、実に目障りな存在であるだろう。著者の百田尚樹氏と、本を刊行した太田出版にエールを贈りたい。
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