著者をその気にさせる編集者の手腕 [ブログ]
「千部の本を数十万で作れるのを世間の人は知らない・・・」
「親子揃って我が社にやって来たなら、まずいける。丸栄社の立派なビルを見れば、安心するだろうし、広いロビーから豪華な応接室に通して話をすれば、イチコロだ」
「あのロビーと応接室の効果は抜群ですね」
「うちは、一階フロアだけは内装にたっぷりと金をかけてるからな」牛河原はそう言って笑った。
「父親は教師で一戸建てに住んでいる。よほど無茶な金額さえ吹っかけなければ大丈夫だろう。二百万くらいはいけると踏んでいる」
「馬鹿野郎、それなりに黒はしているさ。それに契約が済むまでは稼いだとは言えん。契約の直前に気が変わる奴はいくらでもいる。だから、この後が大事なんだ。ハンコを押させるまでは絶対に油断しないことだ」
牛河原は噛んで含めるように言った。荒木は神妙な顔で頷いた。
「でも、たかが千部の本なんか数十万円で作れるのを、世間の人は知らないんですね」
「そんなことが知られたら、大変だ」
「夢を売る男」 1 太宰の再来 より (29~30ページ)
印刷・製本にかかる費用を含めて、出版にいくら金がかかるかは、素人はわからない。だからこそ、100万もかからないのに、200万とか300万とか、かかるように見せかけることはいくらでも可能だ。顧客(著者)としてはその数字を検証することはできない。信じるしかない。
夢の実現のためには騙されることも覚悟する必要がある。場合によっては、売れに売れて印税生活も不可能ではないのだから。(・・・そんなバカな!!)
2014-07-29 02:20
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