「刑政」 3   [出版]

仁愛の碑
 

 時折、外国の施設で、受刑者の暴動があって何百人もが逃走したという報道を耳にする。職員の対応に業を煮やした受刑者が、反抗の結果としてその行為に及んだという事例もあるようだ。
 他方、我が国では、古くは府中刑務所の「天つゆ事件」が有名だが、その際も逃走までには至っていないし、私が知る限りにおいては、暴動により逃走が企図されたことは皆無である。
 また、諸外国の多くでは、そうした暴動や逃走発生のおそれが高いためか、刑務官は銃を下げ、マシンガンを抱えて警備に当たっていると聞く。しかし、日本では、100人もの受刑者を二人の職員で、しかも丸腰で戒護している。
 時には厳しく注意や指導をすることもあり、そのため中には反抗する受刑者もいて、集団で職員を取り囲むといった状況に至るケースもあるが、話せば誤解は解消され、速やかに収拾されている。
    こういった警備のあり方の違いは、どうしてしょうじるのだろうか。施設の設置目的や処遇内容の違い、刑事政策に対する思想の違いや文化の違い、あるいは犯罪者に対する意識の違い等、いろいろな要素が絡み合っての結果だと思うが、残念ながら明確な答えを私は知らない。
     ただ、我が矯正においては、これまで引き継がれてきた「犯罪者も一人の人である」という当然の思いが浸透し、『仁愛の精神』が確固なものとして存在しているからこそ、対話という手段のみをもって暴動を防ぎ、あるいは武器を所持せずに勤務ができるのではないかと思う。
(東京矯正管区長 横尾邦彦)
 
  「刑政」 2014年4月号 巻頭言  より (一部改行)
 

 

 
  
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