「闇サイト殺人事件の遺言」 3   [出版]

死刑制度を巡る著者の考えの変遷

私は以前から死刑廃止の思想を持っていた。いかなる理由にせよ、人間の生命を殺戮するような知的文明社会から著しく剥離した蛮行に反対であった。死刑のような国家権力で生命を抹殺する行為は、アドルフ・ヒトラー率いる旧ドイツ軍親衛隊(ナチス)や、シリアのような軍事独裁国家を連想してしまい、『非人道性』という固定観念を持っていた。

万が一、死刑執行後に冤罪事件だと判明した場合、取り返しのつかないことになってしまう。感情論としても私は到底、死刑制度を受け入れることができなかった。

そんな私は、就職氷河期といわれた時代の二十代後半に家庭を持ち、家族を養うために『公務員』の身分という理由から『治安の最後の砦』に就職した。

有識者を始めとした一般社会人が決して知ることのない裏社会の住人たちの実態を目の当たりにした時、世の中には二種類の人間がいることを知った。彼らの思考は一般社会人と著しく剥離していた。我われ一般社会人の『尺度』で彼ら別世界の住人たちを捉えることは、大きな間違いであることに気づいた。

それまで左翼的思想に傾倒していた人権派の私が、塀の内外を問わず彼らを厳罰で対応せざるを得ないのではないか、彼らの人権を考慮する以前に、平和に暮らす一般庶民の生命・財産を守ることが優先だと、ある意味では危険な思想に変節したのである。

  「闇サイト殺人事件の遺言」 (104~105ページ)より

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河村 龍一 ()

ごま書房新社 (2013/09)

 

 

 

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