元警視監の告発 2 [情報]
告発を決断するまでの苦悩
「わが罪はつねにわが前にあり―期待される新警察庁長官への手紙―」 松橋忠光・著
序章 執筆の目的 より ( 抜粋 )
私の警察在職期間は約28年で比較的短く終わりましたが、同期生の一人として、こうした手紙の形で貴君の心に是非とどめてほしいと考えていることを書くことにしました。これを参考にするかどうかは、まったく貴君の自由であることは言うまでもありませんが、健康上の理由から先の長いことを期待し得ない私の生涯をかけた唯一のものなので、読まれるだけは読んでほしいと願っています。
あれから満8年がたちました。読書と散策と執筆の日々を送り、自己の欲望を制するというただ一つの簡単な努力だけで、自由はたっぷりと心にゆとりを与えてくれました。
「自由」を前提とする私の退官には目的があったのです。貴君にいま初めて明かしますが、警察社会が法令上の本来の姿に立ちかえり、民主的市民警察として立ち直ってもらう上で、かつてその中に身を置いた一人の人間として何かをしなければならない、ということです。
もし私に罪の意識がなかったら、世間並みに職業を続けながら、警察社会の中の矛盾を感じないか目をつぶってすませたかもしれません。しかし、現実の私は良心の疼きに耐えられなくなりました。そして、自らの魂の死をはっきりと見るようになり、私は罪の問題に取り組むことの中から真の生を見いだそうと決心しました。
中身は警察社会の汚濁に満ちた恥部に関するものであり、組織の全体にゆきわたっている膿を指摘するようなものになるでしょう。貴君には読むに耐えない思いを与えるかもしれませんが、しかし同期生の一人が命をかけて書きあげた遺書として扱ってほしいと願うものです。
1984年6月15日初版発行 (株)オリジン出版センター
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