わかりやすい説明のために必要なこと [言葉・文章]
「既知」から「未知」へという展開
(修正案)分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差は広がっている。
(原 文)バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
倉島氏は、「その原因は・・・・・・ことになる」とすればいいという。しかし、具体的にどういうことかとなるとよくわからない。「その原因は、バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安にあることになる」ということか。それは文章として少しおかしい(指摘が適切でない)。ここは、次のように書き直したらいいのではないか。
だが、現実は極めて厳しい。スイスの民間研究所がまとめた世界競争力白書によると、日本の国際競争力は総合評価で93年に米国に1位の座を明け渡した後、毎年のように順位を下げ、97年には調査対象46ヶ国中、9位に落ちた。
分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差を広げている。
バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
中長期的な対応策を欠き、このままの状態を続ければ、21世紀には、欧米先進国はもとより、アジアや中南米の新興工業国との競争にも敗れ、産業・雇用の空洞化が現実のものとなりかねない。
通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて発足させた「イノベーション研究会」は、そうした危機感をバネに、来世紀に向けた産業技術立国のための政府、産業界、大学・研究機関による総合的な戦略のたたき台作りを狙いとしている。
分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差を広げている。
バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
中長期的な対応策を欠き、このままの状態を続ければ、21世紀には、欧米先進国はもとより、アジアや中南米の新興工業国との競争にも敗れ、産業・雇用の空洞化が現実のものとなりかねない。
通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて発足させた「イノベーション研究会」は、そうした危機感をバネに、来世紀に向けた産業技術立国のための政府、産業界、大学・研究機関による総合的な戦略のたたき台作りを狙いとしている。
これは、読売新聞の社説(1998年2月16日)の一部である。倉島保美氏は、「既知から未知の流れが守られていないので、前の文と次の文の関係がわかりにくくなっている」という。書くことのプロである新聞記者でさえわかりにくい文章を書くのであるから、プロでない私たちが訳のわからない文章を書くのは無理もないとも言える。
しかし、書くことを仕事としていない私たちであっても、メールやブログで訳のわからないことを書けば読む人を困惑させてしまう。だからこそ、わかりやすく書くことがすべての人に求められる。
倉島氏はこの文章のわかりにくさについて次のように解説している。
>分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差を広げている。
文中で主語が変わった。「抜かれ」たのは日本もしくは日本の国際競争力だが、「広げている」のは米国である。このため、話題の中心がボケている。
>バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
前の文との関係がよくわからない。日本の競争力が米国に抜かれた原因であろうか?であるなら、「その原因は・・・・・・ことになる」とすることで、既知から未知への流れを守る。
>通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて発足させた「イノベーション研究会」は、そうした危機感をバネに、来世紀に向けた産業技術立国のための政府、産業界、大学・研究機関による総合的な戦略のたたき台作りを狙いとしている。
突然、「通産省が今月初め、」では、前のパラグラフとのつながりがわからない。「そうした危機を回避するため、通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて「イノベーション研究会」を発足させた」と述べることで、既知から未知への流れを守る。
文中で主語が変わった。「抜かれ」たのは日本もしくは日本の国際競争力だが、「広げている」のは米国である。このため、話題の中心がボケている。
>バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
前の文との関係がよくわからない。日本の競争力が米国に抜かれた原因であろうか?であるなら、「その原因は・・・・・・ことになる」とすることで、既知から未知への流れを守る。
>通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて発足させた「イノベーション研究会」は、そうした危機感をバネに、来世紀に向けた産業技術立国のための政府、産業界、大学・研究機関による総合的な戦略のたたき台作りを狙いとしている。
突然、「通産省が今月初め、」では、前のパラグラフとのつながりがわからない。「そうした危機を回避するため、通産省が今月初め、産官学の有識者を集めて「イノベーション研究会」を発足させた」と述べることで、既知から未知への流れを守る。
「書く技術・伝える技術―一読理解、誤解なし!仕事の効率がぐんぐん上がる!!」 (97ページ) より
(原 文)分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差を広げている。(修正案)分野別にみても、トップにランクされていた科学・技術さえ、95年から米国に抜かれ、その差は広がっている。
(原 文)バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、政府も企業も目先の対応に追われている。
倉島氏は、「その原因は・・・・・・ことになる」とすればいいという。しかし、具体的にどういうことかとなるとよくわからない。「その原因は、バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安にあることになる」ということか。それは文章として少しおかしい(指摘が適切でない)。ここは、次のように書き直したらいいのではないか。
(修正案)バブル崩壊後の長期の景気低迷、金融システム不安の中で、事態はますます深刻になっており、政府も企業も目先の対応に追われている。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/kotoba05/komori.pdf より
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2014-02-20 21:55
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