出版社のクレーマー対策 [ブログ]
まさに「盗人にも三分の理あり」
「夢を売る男」 4 トラブル・マスター より (142~144ページ)
後藤は「いやいや」と言ったが、その声には先程までの怒りの響きは消えていた。
「早速、全国の書店に直接連絡して、後藤様の本が入っているかを確認し、もし在庫がなければすぐに入れます。また、在庫が確認された書店のリストを至急お送りいたします」
「とんでもないことでございます。我が社としてもあの素晴らしい詩集を一人でも多くの人に届けたいというのは同じですから」
「これに懲りず、今後とも弊社をよろしくお願いいたします」
牛河原は電話を切ると、宮本に「とりあえず大阪の契約書店に二冊ずつ配本しておけ」と命じた。
「客も書店で自分の本を見たら、納得するだろう」
「はい」
「その分は後でうちが買い取ることになるが、それで客の気が済むなら安いもんだ」
自費出版の出版社にとって顧客は著者である。本が売れなくても著者が負担した出版費用の中に出版社の利益は計上されている。有名な著者の本でさえ売れない状況にあって、無名の著者の本が売れるはずはない。出版社は、そういう売れない本を売る努力をするはずがない。売れなくても利益は確定している訳だから、下手に売れたりすると倉庫から本を搬出して発送するという手間がかかる。出版社にとっては売れない方が楽ということになる。