売れる作家と売れない作家の違い [ブログ]

売れていることが後世に残る条件
  

 
 「現代くらい価値観が多様な時代はない。ほんのちょっと光るものがあれば、メッキでも評価される時代だ。そんな時代にあってすら、本が売れないような作家が後世に評価されることは、まずない」

「でも」と荒木が反論するように言った。「何らかのきっかけで再評価されるということはあるんじゃないですか」

「ない」牛河原は即座に言った。「作家が死後に再評価される具体的な道を考えてみようか。忘れられていた本が再評価されるのは、多くの場合、後の出版社の誰かが、もしかしたら売れるかもしれないと仕掛けを打つといったことがきっかけになる」

「そうですね。まず多くの人にその作品を知ってもらうことが条件ですからね」

「そこでだ。お前が編集者として、生前、売れていなかった本をそんな仕掛けで売り出すことをやってみたいと思うか」

「思いませんね。まして、この出版不況に」

「そういうことだ。そういう仕掛けが可能なのは、生前すごく売れていた作品だ。生前売れてなかった作品を仕掛ける出版社なんかあるはずがない。その証拠に、明治や大正や昭和の売れていなかった作家で、後世の仕掛けで売れた奴がいるか」

「そう言えば一人もいませんね」荒木は納得した顔で言った。「売れっ子であることが後世に残る必要条件なんですね」

「必要条件というか最低条件だな。だから生きている間にベストセラーも書けない作家や現役時代に忘れられた作家は、死ねば作品は全部消える」

「厳しい世界ですね」 

「全然厳しくなんかない。どんな分野の世界でも後世に残るのは一握りの天才だけだ。世代の壁を乗り越えて面白い本を書けるというのは、本当にすごい作家だ」
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 「若いうちに人気作家になった作家には、当然、大勢の読者がつく。作家はその読者のために書けば、それだけで売れる。彼らが欲するものを書いていくだけでベストセラーになるわけだ。それがベストセラー作家の構造だ。しかし、作家が歳を取ると同時に、読者も同じように歳取っていく。作家は読者を抱えながら年老いていくんだ」
  (

「読者が死んでいくのは止めようがないですね」

「そうとは限らない。常に新しい読者を開拓すればいいんだ。若い世代の読者を作品を出し続けていれば、読者が死に絶えることはない。固定客ばかり相手にして、同じメニューばかり出し続けている店は、やがてじり貧になって閉店してしまうのと同じだ」

「でも、新しいメニューに挑戦して失敗したら、元も子もないですよ」

「それはそうだ。だからたいていの作家は、自分の得意料理だけを後生大事に作り続ける」

 牛河原の言葉に、荒木はうーんと唸った。

「かといって、元テレビ屋の百田何某みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな。前に食ったラーメン屋が美味かったから、また来てみたらカレー屋になっているような店に顧客がつくはずもない。しかも次にきてみれば、たこ焼き屋になっている始末だからなー」

「夢を売る男」 6 ライバル出現 より (203~206ページ) 


>あなたは出版に対する何らかの強い嫉妬心が窺えると所見します
   

驚いた。某精神科医なる方からコメントを頂いた。どうしてそういうことが言えるのか。何を根拠にそう言うのか。まったくもって理解できない。
 
私がこだわっているのは、出版だけではない。私がこだわっている他のことについてどれほどの知見を持っているというのか。その独断と偏見に満ちたコメントには、ただただ恐れおののく(笑)。


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