小説家の世界   [ブログ]

現実とはかけ離れた夢の印税生活
  

  「信じられない話だが、プロの中には頑張っても一ヵ月五十枚も書けない奴がごろごろいるんだ。一日かかって原稿用紙二枚が書けないんだから、どうしようもない。ひどいのになると、一枚も書けないなんて大物もいる。一日かかって四百字も書けないんだから、作家みたいなもんとっとと廃業しろってんだ」
  「なんでそんない書けないんですか」

  「小説家になんかになってはいけないタイプの人間がなったからだ。というのも現代では、小説家という職業が、かっこいい憧れの存在になってしまったんだよ。スーツを着て毎朝満員電車に揺られて一日中働かされるサラリーマンの生活に比べたら、小説家は時間は自由だし、普段着でいいし、しかもクリエーターとかアーティストと呼ばれて皆に尊敬される存在だ。おまけに成功したら、夢の印税生活が待っている」

  「部長の話を聞いていたら、僕も小説家になりたくなってきましたよ」

 荒木が皮肉っぽく言った。

  「まあ、そんなわけで現代では、表面的なことに憧れて小説家や物書きを目指す人間は多い。またそんな奴でも、運がよければなれてしまうのがこの業界なんだ。しかし本来、小説家なんて職業は物語ることに取り憑かれた人間がなるものだと思う。面白おかしいホラ話を語らずにはおれない異常な情熱を持った人間だ。本当に才能のあるのはそういう人間だ」
  
   ( 中 略 )

 「売れない作家に相当厳しいですね」
 「当たり前だ。売れない作家なんて、出版社に何の利益ももたらさないんだからな。それに資源の無駄使いだ。売れない本のためにどれだけの森林がなくなっているか。それなのに、いっぱしの芸術家気取りで口ばかり偉そうなことを言いやがる」

 「売れない作家はすべてダメなんですか?」

 「全部がダメというわけじゃない。売れない作家の中には真摯な素晴らしい作品を書く作家もいる。おのれの血で書いたというような作品もある。しかし、そういう作品は読む者にも血を流すことを要求する。だから売れない」


「夢を売る男」 5 小説家の世界 より (178~180ページ)    
    

書きたいことを書いてそれで食っていける作家なんてどれほどいるのか。ほとんどいないのではないか。食っていくためには書きたくないことでも書かなければいけない。しかし、無理して書いたとしてもそれが売れるとは限らない。印税生活なんて夢のまた夢だ。            

その点では、ブログは好きなことだけ書けばいいから気ままなものだ。読者がいるに越したことはないが、読者に少しも媚びる必要などない。書きたいから書く。それがブログのいいところだ。しかし、「あなたのブログを本にしませんか」という声がかかった時には、注意しなければいけない。無名の素人が書いた本など売れるはずはないのである。
  
百田尚樹氏は、2006年、「永遠のゼロ」で作家デビューした。当時50歳。作家としてのスタートは遅い。主人公・牛河原が語る小説家論は、百田氏の作家としての持論であろう。
  
百田氏は、自分の属する出版業界のことを赤裸々に暴いている。実績のある百田氏だからこそこの本が出版できた(太田出版)のだろうが、果たして他の出版社からこの本を出そうとした場合、それが実現したのかどうか…。少なくとも、自費出版系の出版社からは出版できなかっただろう。
  

百田氏の冒険的ともいえる手法には喝采を贈りたい。ぜひとも続編を期待したい。
 

作家の素質・作家になる方法

http://prosakka.main.jp/qa/hoho/010.html
 

小説家に必要な資質

http://ameblo.jp/shiryukei2/entry-11350057719.html
  

作家・ライターの毎日

http://www.10dcf.jp/02/001.html
  
  

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