客を納得させるための契約書店というシステム   [ブログ]

名目だけの書店配本
  


 「後藤様もお気づきかもしれませんが、名前のある作家の新刊でも、売れないとなれば、あっという間に平台から消えます。早いものですと一週間、普通で二週間。一ヵ月以上平台に置かれている本はよほどの有名作家か話題本です」

 「ああ、そう言えばそうやな」

 「しかし、後藤様の本が書店にないということはうちにとっても大問題です。よくお知らせくださいました。あの詩集は、一人でも多くの人に手に取ってもらいたいと編集部一同で願っている本です。早速、取次と書店に連絡して、きっちりと本を置かせるようにします」

 「ほうか」

 「先程も申し上げましたように、とにかく取次も書店も、出版される本が多すぎて、すべてに手が回らないのが実情です。しかしそれは言い訳になりません。どの本もすべて著者が魂を込めて書かれた本です。おろそかに扱っていいはずはございません」

 ( 中 略 )

 「いろいろと気ぃ使わせて悪いなあ」

 「とんでもないことでございます。我が社としてもあの素晴らしい詩集を一人でも多くの人に届けたいというのは同じですから」

 「えらいおおきに」

 「これに懲りずに、今後とも弊社をよろしくお願いいたします」

 牛河原は電話を切ると、宮本に「とりあえず大阪の契約書店に二冊ずつ配本しておけ」と命じた。

 「客も書店で自分の本を見たら、納得するだろう」

 「はい」

 「その分は後でうちが買い取ることになるが、それで客の気が済むなら安いもんだ」

「夢を売る男」 トラブル・バスター より (142~144ページ) 

 

書店に配本するといってもそれが陳列されるとは限らない。契約書店となれば書棚に置かれることはあろうが、出版社がその書棚を借り切っているとなれば、結局は著者がその経費を負担することになる。実に客を馬鹿にした商法である。

                

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