ある出版社の信じられない営業姿勢   [フィクション]

出版不況で苦しい出版業界 

これはあくまでもフィクションである。

 
Cさんは、10年前に35年の公務員生活を終え、現在、相模湾が見渡せる伊豆高原の地で奥さんと二人で第二の人生を送っている。
 

奥さんとは学生時代に知り合った。結婚して3人の子宝に恵まれた。3人の子供はそれぞれ、独立して家庭を築いている。子供たちは、年に数回、孫を連れて遊びにくる。その時だけは、静かな家の中がかつての賑わいを取り戻す。
 

公務員時代には、突発的な出来事が発生し、休日であっても呼び出されることがよくあった。年間20日以上あった年次有給休暇も容易には取得できなかった。通常の休暇であっても、旅行するときなど緊急事態に備えて行き先を報告しなければいけなかった。
 
退職した後、Cさんは、「知的能力の衰退を防ぎ、他者に依存することなく自立できる後期高齢者の生き方を目指したい」と、パソコンを駆使して公務員時代の思いや日々のできごとをブログに綴っている。
 

去年、ブログの記事を一冊の本にまとめてある出版社から500部出版した。その出版社は、格安の費用で出版を請け負ってくれた。Cさんとしては、人生の一区切りの記念になればいいという思いで出版した。親戚や知人・友人に読んで貰えばいいと思っていた。
 

ところが、意外なことにその本は、口コミで評判が広まり、わずか半年で売れ切れた。そうしたところ、出版社から「増刷しませんか」という声が掛かった。増刷するとなると、出版社が費用は全額負担するものの、売れ残った場合にはそれを著者が買い取らなければならなかった。増刷の最小単位は1,000部だった。
 

Cさんは、思案した。一人でも多くに人に読んで貰えることは著者としてこの上ない喜びではあったが、果たして売れるのかという不安があった。
  
しかし、出版社から熱心に薦められたことからCさんは、増刷を決断した。売れなければそれを買い取って自分で無料で配布すればいいとも思った。
  

かくして、Cさんの本はめでたく増刷(第二刷)となった。初版(第一刷)は、500部が半年で売れ切れた。しかし、増刷した1,000部は売れ行きが芳しくなかった。どんなに人気のある作家の本でもいつかは売り行きはストップする。著名人の本でも売れないのに、無名の著者の本がそう簡単に売れるはずはない。
   

増刷した本の販売契約期間が終了した。やはり、売れなかった。大量の売れ残りが生じた。そして、当然のことながら、売れ残りの買取り要請が出版社から来た。
 

  (以下続く)
  


 

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                                           写真  http://www.mapple.net/photos/H0000107269.htm


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