「死刑廃止に向けて 代替刑の提唱」   [出版]

死刑執行停止し終身刑の導入を!

   

死刑廃止に向けて

  代替刑の提唱      菊田幸一

         

284ページ~285ページ)

        

終身刑導入を条件に死刑執行を停止すべきだとの意見は、日弁連をはじめ最近では宗教界にも広がっている。キリスト教諸教団はもとより、仏教界ではまず真宗大谷派が98年6月に「死刑制度を見直し、死刑の停止を求める」声明を、また天台宗が99年4月に「死刑執行を停止し、被害者や遺族との悲しみの共有と、償いが可能な社会をつくる」声明をだしている。

   

この背景には、93年9月に最高裁によって「一定期間死刑の執行を法律によって停止する」ことを含む立法措置を提起する補足意見が出されたことも影響していると思われる。近年、地裁・高裁レベルでは死刑の求刑に対して、死刑判決を回避する傾向が顕著である。97年2月に広島高裁が言い渡した無期懲役判決は、前の事件で無期懲役判決を受けて仮釈放中の人物が起こした強盗殺人事件だが、裁判官は「死刑と無期の間には無限の隔たりがある。裁判所としては、仮釈放のない無期懲役を考えても良いと思う」とし、いわば実質的に終身刑の考えを示した。

   

仮釈放のない終身刑は死刑より残酷である、との意見がある。しかし、ある死刑囚の次の言葉をかみしめてほしい。

      

「死刑囚は長時間拘禁されたからではなく、いつ死刑囚として処刑されるかわからないという状況に置かれているが故に、精神的に病んでしまうのです。たとえ生涯塀の外に出ることができなくとも、塀の中の生活もまた人生です。終身刑を死刑の代替刑とすることで、百年先の死刑廃止の実現よりも、近未来の死刑廃止の実現を望みます」。また、別の死刑囚も「生きて償うことは死ぬことよりつらいけれども、その選択の機会を与えて欲しい」と述べている。

     

現実に死刑制度があり、定期的に処刑されている日本の現状や被害者感情を考えれば、「凶悪犯人は死刑にせよ。さもなくば生涯を刑務所で」の声が今日の日本における多数の意見であると思われる。そして現時点では、国民の多数の納得が得られる刑罰は、仮釈放のない終身刑に傾いている。

    

私は率直に言って、死刑という罪名を法律上からも削除することは、早急には困難であると考える。死刑という罪名があって、何らかの終身刑を採用し、そのことで現行法の死刑と無期懲役の格差をなくし、事実上の死刑執行回避が一定期間継続することを希望する。それには最も厳しい、仮釈放のない終身刑をまず採用することが現実的である。イギリスやドイツなどの死刑廃止先進国においても、まず仮釈放のない終身刑を採用し、死刑廃止を実現した後に仮釈放や恩赦の適用などを採用している。

    

国会で、死刑の代替刑について超党派による論議が早急に進められることを要望する。

   

菊田幸一 (著)

明石書店 (2005.3.30

 
 
  

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